「個人保証なし」スタートアップ創出促進保証とは?最大3,500万円の資金調達が可能な制度を解説
「スタートアップ創出促進保証」は、中小企業基盤整備機構が提供する、新規事業に必要な資金調達の障壁を取り下げる保証制度です。スタートアップ創出促進保証制度は、経営者の個人保証を不要とする新しい信用保証制度で、起業・創業の促進を目的としています。
この制度は、スタートアップ企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証を行うもので、経営者自らが連帯保証人となる必要がなくなるため、起業のハードルを下げることが期待されています
2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(PDF方式)によると、失敗時のリスクが大きいために起業することをためらう起業関心層の方のうち、およそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念しているという結果から、こうした懸念を取り除き、創業機運の醸成ひいては起業・創業の促進につながるように、経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度として2023年3月15日に開始しました。
本制度の利用(申請)は、経済産業省および中小企業基盤整備機構ではなく、金融機関または最寄りの信用保証協会から申請する必要がありますのでご注意ください。
なぜ、スタートアップ創出保証制度が必要なのか
スタートアップは、事業実績のない企業が多い背景から、資金調達が難しい状況に置かれていることが課題でした。特に金融機関などからの融資などにおいて、会社の保証人や連帯保証人となっている場合が多く、実質的に会社での債務を個人で、無制限に返済する義務を負うことになっています。
経営者個人が会社の連帯保証人となる制度を「経営者保証」といいますが、金融機関においては保証があることで返済への安心感につながる一方、経営者にとっては創業や事業拡大、研究開発への投資やM&A・事業承継などを妨げる要因となっていることから、経営者保証を必要としない融資制度のニーズが高まり、一定の条件を満たす企業に対して「原則無保証化」とする対策として制度設立された背景があります。
制度概要
保証対象者 |
|
---|---|
保証限度額 | 3,500万円 |
保証期間 | 10年以内(保証期間は、返済期間と同じで、長期間にわたる返済および保証が可能) |
据置期間 | 1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内) |
金利 | 金融機関所定 |
保証料率 | 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率 ※保証料率は各信用保証協会にお問い合わせ下さい。 |
担保・保証人 | 不要 |
その他 |
|
取扱期間 | 2023年3月15日より保証取扱いを開始。 |
2023年3月15日にスタートしています。期限は現状決まっていません。
また制度名は未定ですが、2024年3月15日から受け付け開始予定の新制度も注目です。
【条件】
① 過去2年間(法人の設立日から2年経過していない場合は、その期間)において貸借対照表、損益計算書等その他財産、損益又は資金繰りの状況を示す書類(*1)を当該金融機関の求めに応じて提出していること。
② 直近の決算書において代表者への貸付金等(*2,3)がなく、かつ、代表者への役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められる額を超えていないこと。
③ 直近の決算において債務超過ではない(純資産の額がゼロ以上である)こと又は直近2期の決算において減価償却前経常利益が連続して赤字ではないこと。
④ 上記①及び②については継続的に充足することを誓約する書面を提出していること。
⑤ 中小企業者が保証人の保証を提供しないことを希望していること(*4)。
(*)法人の設立後最初の決算が未了の者の場合にあっては①から③までに掲げるものを、法人の設立後最初の2期分の決算が未了の者にあっては③に掲げるものをそれぞれ除く。
【保証料率】
• 通常の保証料率に、上記③の要件を両方とも満たしている場合は0.25%、どちらか一方のみを満たしている場合は0.45%の上乗せを行う(2期分の決算書がない場合は0.45%の上乗せ)。
• 事業者負担軽減のため、時限措置として、上乗せした保証料の一部について軽減措置を実施。
⚫ 保証料率の上乗せという経営者保証の機能を代替する手法を活用することから、経営者保証ガイドラインの3要件(①法人・個人の資産分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性確保)よりも緩和した要件を設定。
⚫ また、新制度の活用を促すため、新制度における「上乗せ保証料」について、 3年の時限措置として軽減(令和7年3月末までの保証申込分は0.15%、令和7年4月から令和8年3月までの保証申込分は0.10%、令和8年4月から令和9年3月までの保証申込分は0.05%に相当する保証料を国が補助)。
(*1)原則、貸借対照表及び損益計算書とするが、必要に応じて試算表や資金繰り表等も含む。
(*2)「代表者」には代表権を持つ者のほか、代表者に準ずる者も含む。
(*3)「貸付金」以外の金銭債権(仮払金・未収入金等)も含み、少額のものや事業の実施に必要なものは除く。
(*4)経営者保証を不要とすることができる既存の保証制度等については、本制度によらず、引き続き従前の取扱いを可能とする。
スタートアップ創出促進保証の申請方法
まずスタートアップ創出促進保証制度用の創業計画書の作成が必要です。中小企業庁HPよりダウンロードしてください。
あとは最寄りの金融機関、各信用保証協会に問い合わせの上、内容に応じて金利や融資額などを詰めていきます。補助金や助成金と異なり、あらかじめ予算や補助額の%が決まっているものではありませんので。個別での調整となります。
融資後に必要な「ガバナンスチェック」とは
融資後に、会社設立して3年目及び5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づく確認と助言を受ける必要があります。
これは企業が創業期から次のステージに移行するにつれガバナンス向上の取組みが期待される中、創業期の中間期・終期のタイミングにおいて、中小企業活性化協議会の統括責任者などによる助言や必要に応じて磨き上げ支援を受けることで、創業者の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋げることを目的としたものです。
そのため、融資を受けた事業者は、会社設立後3年目及び5年目中に中小企業活性化協議会に連絡の上、窓口相談(収益力改善への取組みの必要性確認およびガバナンスチェック)を行ってください。
中小企業活性化協議会によるガバナンス体制のチェックが必要となり、事業者はチェックシートを金融機関に提出しなければなりません。
「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」とは=中小企業庁で2022年8月31日に設置した「中小企業収益力改善支援研究会」(座長:家森信善神戸大学経済経営研究所教授)より、同年12月に取りまとめた「収益力改善支援に関する実務指針」において、ガバナンス体制の整備に特に必要な項目を具体化し整理した「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」を活用し本制度用に制定したものを指します。
保証額はどれくらいなのか?
概要には『各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率』とありますが、具体的にはどの程度か調べてみると利用した融資額に対して年率1.0%前後が必要となるケースが多いようです。
東京信用保証協会=年率0.55~0.80%(創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せ)
静岡県信用保証協会=年1.1%(創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せ)
愛知県信用保証協会=財務状況に応じ、9段階に区分された弾力料率体系が適用
広島県信用保証協会=年0.9%(創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せ)
福岡県信用保証協会=年1.15%(創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せ)
上記のように都道府県によって差がありますので、最寄りの金融機関等への確認をお願いいたします。
まとめ
岸田総理はスタートアップ支援にも力を入れており、積極的な対策を講じています。その中で、より起業のハードルを下げ必要な資金が調達できる本制度は有意義に感じられます。
一方で、結局金融機関はしっかりと融資を回収することでしか収益は出せないため、スムーズに保証なしで幅広く貸し付けが始まるかと言うとどの程度の実績がでるのか疑問に残る部分もあります。
いずれにしてもスタートアップが日本を変えていく、ということを当社は信じており、本制度なども活用してスタートアップ支援を行って参ります。
EXPACTでは、特にスタートアップ企業への補助金活用や資金調達を強みとしており、実績・経験も多数ございます。資金調達成功に向けて、パートナーを探している、また詳しく話を聞いてみたいという方はお問い合わせください。