はじめに
雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金は、休業や教育訓練を通じて労働者の雇用を維持するための支援を提供します。
この助成金の支給対象となる教育訓練は、職業に関する知識、技能または技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習等で、所定労働日の所定労働時間内に実施されるものです。
「職業に関する」とは、現在就いている職業に直接関係するものに限らず、現在就いている職業に関連する周辺の技能、知識に関するものも含まれます。また、事業活動の縮小等に伴い配置転換をする場合などに必要な訓練も含まれます。
しかし、職業人として共通して必要となるもの、就業規則等に基づいて通常行われるもの、法令で義務づけられているもの、転職、再就職や自営のためのもの等は本助成金の支給対象となりません。
教育訓練については、普段実施できないような訓練を実施することにより通常業務を見直す機会ができる等、労働者の働く意欲の向上につながることが期待されます。
対象となる条件
この助成金は、特定の経済的困難を経験している企業が対象です。これには、売上の減少が特定の基準を満たすこと、また労働時間の短縮や一時休業の実施などが含まれます。
- 雇用保険の適用事業主であること。
- 売上高や生産量などの指標が最近3ヶ月の平均で前年同期比10%以上減少していること。
- 中小企業の場合、雇用量が前年同期比10%を超え4人以上増加していないこと。中小企業以外の場合は5%を超え6人以上増加していないこと。
- 実施する雇用調整が一定の基準を満たすこと。
助成金のメリット
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動が縮小された事業主を対象に、休業や教育訓練、出向にかかる費用を助成する制度です。
企業は助成金を通じて、従業員を解雇せずに済むため、雇用の安定に寄与できます。従業員は収入の一部を補填され、経済的安定を保てます。多くの企業がこの助成金を活用して、COVID-19の影響下での雇用を維持していました。
例えば、タクシー運転手や宿泊業の労働者に対する、業務上必要な教養以上の英会話研修や、新入社員に対して、自宅でインターネットを活用する形で実施する新人研修などが具体的な活用例として挙げられています。
助成額と助成率
休業の実施時、事業主が支払った休業手当負担額、教育訓練実施時の賃金負担額の相当額に助成率を乗じた額。教育訓練実施時は加算額もあります。1人1日あたり8,490円が上限です。
助成額については、中小企業の場合、原則的な措置では中小企業: 2/3 、大企業:1/2 (令和5年8月1日時点で最大で1日あたり8,490円)が助成されます。
教育訓練を実施した場合は、さらに訓練費として、1人1日当たり1,200円(半日にわたり訓練を行った場合の日数は0.5日として計算します)を加算します(教育訓練の加算額は上限額の計算に含みません)。
なお、休業・教育訓練を実施した判定基礎期間内に、休業等を行った対象労働者が「所定外労働等」(所定外労働(法定外労働を含む)又は所定休日(法定休日を含む)における労働)を行っていた場合、対象労働者の「所定外労働等」の時間相当分を助成額から差し引きます。
これを「残業相殺」といい、具体的には社会保険労務士にご相談ください。 また、対象期間の所定労働日数が合理的な理由なくその直前の1年間よりも増加している場合、休業・教育訓練を行った日数から増加日数分を差し引きます。
また、助成額の算定方法としては、雇用保険料の算定基礎となった賃金総額や年間の所定労働日数等から求めた平均賃金額を使う方法(平均賃金方式)と、実際に支払った休業手当等の総額から助成額を算定する方法(実費方式)があり、企業規模を問わず選択することができます。
申請プロセス
申請は、労働局やハローワークを通じて行われます。必要な書類には、経済的困難の証明、雇用維持計画、賃金台帳などが含まれます。
また、休業手当又は教育訓練に係る賃金が、通常の賃金等と明確に区分されて表示されている賃金台帳等に加え、休業手当等の具体的な算定過程が分かる書類を整備し、労働局からの求めに応じて提出することが必要です。
なお、不正受給への対応は厳格化されており、申請内容に誤りがあった場合や受給した助成金の返還を希望される場合などは、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークに連絡することが求められています。
令和6年1月からの変更点
令和6年1月から、雇用調整助成金の支給額算定方法が変更となります。
雇用調整助成金は、前年度の雇用保険料の算定基礎となった賃金総額を用いて1日あたりの助成額単価を算定する方法(平均賃金方式)等により支給額を算定してきましたが、その平均賃金方式を令和6年1月から廃止し、実際に支払った休業手当等の総額を用いた算定方法(実費方式)に一本化します。
休業手当又は教育訓練に係る賃金が、通常の賃金等と明確に区分されて表示されている賃金台帳等に加え、休業手当等の具体的な算定過程が分かる書類を整備し、労働局からの求めに応じて提出することが必要です。
改正前後いずれであっても、残業相殺によって上記により算定した額よりも支給額が少なくなることがあります。残業相殺については雇用調整助成金ガイドブックをご確認ください。
【ガイドブック】https://www.mhlw.go.jp/content/000656127.pdf
課題と考慮事項
申請プロセスの複雑さや、すべての企業が条件を満たせない可能性があります。また、長期的な経済的困難に対する対策としては限界があることも考慮する必要があります。
まとめ
特に現在の経済状況、特にCOVID-19パンデミックに伴う経済の不安定化において、この助成金は雇用の維持と企業の経済的負担の軽減に重要な役割を果たしていました。また、教育訓練を通じて労働者のスキルアップを図ることも可能で、その範囲や条件については適宜確認することが求められます。
最後に
雇用調整助成金ですが、不正な申請や受給が全国で増加しています。 実際には働いている従業員を休ませたように装うなどして、受け取った助成金を会社の運転資金に回すケースなどが多いようです。 労働局は不正受給の防止を図るために、事業所に対し立入検査等を実施するとともに、不正受給の事実が判明した場合には、事業主名の公表等の厳しい対応を行っています。 助成金は正しい方法で適切に申請を行ってください。 補助金や給付金に関して、ご不明な点がございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
令和4年11月以降の雇用調整助成金の特例措置
雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、「事業活動の縮小」などの際、従業員の雇用維持を図るために労使間の協定に基づき、「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものになります。 特例措置の実施期間は令和5年1月末日まで延長になりました。
そして、令和5年1月末をもって終了となります。12月と23年1月は経過措置として、従業員1人当たりの日額上限額を現行の1万2000円から9000円に引き下げ、最大10割だった助成率も9割(大企業は3分の2)に縮小となります。
通常時の雇用調整助成金についての情報は、雇用調整助成金の制度紹介ページをご覧ください。 雇用調整助成金ガイドブック(簡易版) このコラムでは各事業者向けの「雇用調整助成金」についてお伝えします。
支給対象となる事業主
新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置では、 以下の条件を満たす全ての業種の事業主が対象となります。 ①新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種) ②売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1か月間(休業を開始した月(その前月または前々月でも可))の値が1年前の同じ月に比べ5%以上減少している ※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があります。 ③労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
支給の対象となる期間と日数
事業主に雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当などが、「雇用調整助成金」の助成対象です。 学生アルバイトなど、雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当は、「緊急雇用安定助成金」の助成対象となります。(雇用調整助成金と同様に申請できます) 雇用調整助成金は、1年の期間内に実施した休業が支給対象となります。 ただし、特例により、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い事業活動の縮小を余儀なくされた事業主で、休業した対象期間の初日が令和2年1月24日から令和4年6月30日までの間にある場合は、本助成金の対象期間は令和4年6月30日まででしたが、9月30日まで延長となっています。 助成金を受けることができる支給限度日数は、1年間で100日分、3年で150日分が上限です。 こちらも特例により緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和4年9月30日)に実施した休業は、この支給限度日数には含めないことになっています。
助成額と助成率
助成額 = 休業を実施した場合に支払った休業手当に相当する額(※) × 下表の助成率 (※)次の①から③までのいずれかの方法で計算します。
① 前年度1年間における雇用保険料の算定基礎となる賃金総額を、前年度1年間における1か月平均の雇用保険被保険者数及び年間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払い率をかけた額
②初回の判定基礎期間の初日が属する年度または前年度の任意の月に提出した給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の支給額を人員及び月間所定労働日数で割った額に、休業手 当の支払い率をかけた額
③小規模事業主(従業員がおおむね20人以下)の場合は、実際に支払う休業手当の総額(※1)原則的な特例措置、地域・業況特例のいずれについても、令和3年1月8日以降の解雇等の有無で適用する助成率を判断。 (※2)緊急事態措置を実施すべき区域、まん延防止等重点措置を実施すべき区域(以下「重点措置区域」と いう)において、知事による、新型インフルエンザ等対策特別措置法第18条に規定する基本的対処方針に沿った要請を受けて 同法施行令第11条に定める施設における営業時間の短縮等に協力する事業主。 (※3)生産指標が最近3か月の月平均で前年、前々年又は3年前同期比30%以上減少の全国の事業主。 なお、令和3年12月までに業況の確認を行っている事業主は、令和4年1月1日以降に判定基礎期間の初日を迎えるものについては、その段階で業況を再確認する。 また、令和4年4月以降は毎月業況を確認する。
支給までの流れ
緊急対応期間中の特例として「計画届」の提出を不要としています。
労使協定⇒休業等の実施⇒支給申請⇒労働局の審査⇒支給決定の順番です。
雇用調整助成金 支給決定までのフロー
申請手続方法
雇用調整助成金の申請手続は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークで手続きします。 ※郵送や雇用調整助成金オンライン受付システムでの申請も可能です。 雇用調整助成金・産業雇用安定助成金オンライン受付システム(https://kochokin.hellowork.mhlw.go.jp/prweb/shinsei/) 操作マニュアル R3.9.8掲載 リーフレット R3.7.7掲載
お問い合わせ先
問い合わせが多く電話がつながりにくい時間帯があるようです。 雇用調整助成金のホームページや厚生労働省公式LINEアカウント活用しましょう。 学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター 0120-60-3999 受付時間 9:00~21:00(土日・祝日含む) 厚生労働省公式LINEアカウント →友だち追加用リンク https://lin.ee/qZZIxWA
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