
現代のビジネス環境では、単に性能や機能が優れているだけでは市場で勝ち残ることは困難です。同じ機能を持つ製品が多数存在する中で、消費者は「使いやすさ」「見た目」「操作体験」などの総合的な価値で製品を選びます。ここで重要になるのが Industrial Design(工業デザイン) です。工業デザインとは、製品の形状や機能、使い勝手、製造性、そしてブランド価値までを総合的に設計する活動を指します。製品開発における戦略的な要素として、企業の競争力を左右する重要な役割を担っています。本記事では、Industrial Designの基本概念、ビジネス上のメリット、国内外の具体的な活用事例を解説します。
1. Industrial Designの基本概念
Industrial Designは、単なる「見た目の美しさ」を追求する活動ではなく、製品の価値を高めるための総合的な設計プロセスです。性能や技術だけではなく、消費者体験や製造効率を含めたデザイン戦略として重要視されています。
- 形状・機能設計
製品の外観や構造を設計することで、操作性や使いやすさを確保します。たとえばスマートフォンの薄型化やカーブデザイン、自動車の空力性能を考慮した外観設計などが該当します。 - ユーザー体験(UX)の向上
視覚、触覚、操作感などを総合的に設計することで、製品を使用する際の満足度を高めます。例として、家電製品のボタン配置、操作音、手に持った際のフィット感などがあります。 - 製造性・コスト管理
デザインは作れることが前提です。材料選定や加工方法、量産効率を考慮した設計が求められます。プラスチック部品の成形しやすさや組み立ての簡便さも重要です。 - ブランド価値の強化
デザインは企業や製品のイメージに直結します。美しく使いやすい製品は消費者の印象を高め、ブランド認知や価格競争力にも影響します。
2. Industrial Designがもたらすビジネス上のメリット
Industrial Designを戦略的に活用することで、企業は市場競争力の強化だけでなく、顧客満足度の向上や生産効率の改善など、複数のメリットを享受できます。
- 差別化
同機能の製品が複数存在する中で、デザインで独自性を持たせることで、消費者に選ばれやすくなります。たとえば、Appleの製品は見た目の洗練さと操作性で他社製品との差別化に成功しています。
- 市場価値の向上
高品質なデザインはプレミアム価格設定を可能にし、利益率向上に寄与します。デザインに優れた製品は、価格よりも体験価値を重視する顧客層に支持されます。
- 顧客満足度向上
操作性や持ちやすさなど、ユーザー体験を重視した設計は、顧客のリピート率を高め、口コミやブランドロイヤルティの向上に直結します。
- 開発効率の改善
製造性やコストを考慮した設計は、量産時の無駄を削減し、開発・製造コストの最適化につながります。
3. 国内スタートアップ企業における活用事例
日本国内でも、スタートアップ企業が戦略的にIndustrial Designを活用する事例が増えています。特に、製品の差別化やUX向上を目的とした設計に注力しています。
- ソラコム株式会社
IoT向け通信プラットフォームを提供するソラコムは、SIMカードやIoTデバイスの外観・操作性を徹底的に設計。デバイスの小型化と簡単な接続方法を実現し、開発者や法人ユーザーから高い評価を得ています。
- Noile-Immersive(仮)
VRデバイスを開発するスタートアップ。装着感や重量配分を工業デザインの観点から改善し、長時間の使用でも快適に体験できることを重視。Pitchでは「体験の質の高さ」を前面に打ち出して資金調達に成功しました。
- +Style(プラススタイル)
スマートホーム機器を手がける国内スタートアップ。IoTデバイスの外観と操作性にこだわることで、家庭での自然な使用体験を提供。デザイン性の高さが購入の決め手となるケースも多く、ブランド価値向上に直結しています。
4. 海外企業における活用事例
海外ではIndustrial Designを戦略の中心に据える企業が多数存在し、製品力の強化や市場の拡大に成功しています。
- Apple
スマートフォン、パソコン、タブレットなど、すべての製品で統一感のあるデザインを実現。外観の美しさだけでなく操作性やユーザー体験も設計の対象としています。
- Dyson
掃除機やドライヤーの形状・吸引力・操作性を徹底的に設計。デザイン性と機能性を両立させ、世界的ブランドとしての地位を確立しました。
- Tesla
電気自動車のデザインにより、性能だけでなく外観・乗り心地・操作体験を重視。ブランド価値向上と差別化に成功しています。
6. Industrial Designの今後
デジタル技術の進化や消費者ニーズの多様化に伴い、Industrial Designの役割はますます重要になっています。デザインを通じた価値創造は、単なる見た目の美しさだけではなく、ビジネスの成長戦略そのものといえます。
- IoT・スマートデバイス
家庭やオフィスのあらゆる機器がデジタル化される中で、使いやすさや操作感は製品の差別化要因になります。Industrial Designを通じて、直感的な操作や快適な体験を提供できるデバイスが市場で優位に立つでしょう。
- サステナビリティへの対応
環境意識の高まりに伴い、素材選定や製造プロセスにおけるエコデザインの重要性が増しています。リサイクル素材や省エネ設計を取り入れることで、企業の社会的価値も向上します。 - デジタルツールとの融合
3Dモデリングやシミュレーション技術の進化により、設計段階で製品の使い勝手や製造効率を高精度に検証可能です。これにより試作回数を減らし、開発期間を短縮することができます。 - グローバル市場での競争力向上
デザインに優れた製品は海外市場でも高く評価されます。特に日本のスタートアップは、技術力だけでなく、洗練されたデザインを武器にグローバル展開する事例が増えています。例えば、IoT機器やスマート家電は、欧米・アジア市場での受容性が高い製品デザインが求められます。
7. まとめ
Industrial Designは、単なる「見た目の良さ」を追求する活動ではなく、製品の競争力、顧客体験、ブランド価値を総合的に高める戦略的な設計活動です。特にスタートアップ企業にとって、限られたリソースで市場にアピールするためには、デザインの力が大きな差別化要因となります。
国内外の事例を通じてわかるように、Industrial Designを製品開発の初期段階から取り入れ、UXや製造性、ブランド価値を意識した設計を行うことが、ビジネス成功のカギとなります。さらに、IoT、サステナビリティ、デジタル技術との融合を進めることで、デザインは単なる装飾ではなく、企業戦略そのものとなるのです。
参考資料
・インダストリアルデザインとは?定義から実践例まで解説 | 株式会社ケイズデザインラボ
・インダストリアルデザインとは?魅力と特徴を徹底解説|ゆきを/インテリアコーディネーター|内装デザイナー
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