補助金等の「加点項目 経済産業省が行うEBPMの取組に対する協力」とは?
①EBPMとは
EBPMとは「エビデンスに基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making)」の略称であり、「統計データや各種指標など、客観的エビデンス(根拠や証拠)を基にして、政策の決定や実行を効果的・効率的に行うこと」と定義されている。事業再構築補助金の加点項目にもなっており、注目されています。
②EBPMの目的
EBPMの目的は、民意や社会の状況をキメ細かく、すばやく、的確に反映した政策を立案・実行し、普段は見えにくい政策の効果を可視化して、誰もが効果を実感できるようにすることである。
少子高齢化が進み社会の生産性向上が求められるなか、行政機関においては、限りある人的リソースや財源を最大限有効活用して、透明性、信頼性の高い効果的な政策を行う必要性が高まっている。行政機関の仕事のあるべき姿に立ち返るための仕組みとして、期待されている。
③EBPMが注目されている理由_その1(従来の政策立案の問題点)
従来は、政策立案時に民意や社会の状況をキメ細かく、タイムリーに把握するには限界があり、「大きな声」「身近な声」「理解しやすい声」を中心に政策が決まりがちで、偏りが生まれる可能性を常にはらんでいた。
さらに、政策の効果を検証するのも容易ではなく、これまで新しい政策の効果を検証する際には、いくつかの成果指標を設定し、その実績を計測して評価していた。しかし、対象とする政策と計測した効果の間に因果関係があるのか、明確には分からないケースが多く存在した。
また、政策を実行するためには、それなりのコストがかかるばかりではなく、その政策によって、これまで問題になっていなかった部分に、新たな問題の種を蒔いてしまう恐れもある。このため、立案された政策と効果の因果関係がはっきりしない状態では、無難に過去の慣例を踏襲するだけになりがちであるという問題があった。
④EBPMが注目されている理由_その2(ICTの発展)
EBPMは、ICTが急激に進化したからこそ、実践できるようになった考え方だといえる。
これまでは、エビデンスとなるデータを集めようにも、予算や資源、人材の面で限界が存在した。しかし近年、ビッグデータの整理・加工・分析や、AIの活用により膨大なデータから一見、見えにくい傾向の抽出や、SNSやネット上の膨大な情報、IoTを活用することによって、実社会の克明な動きを把握することも可能となった。
こうしたICTの進歩により、専門家でも気づかない隠れた民意や見えにくい社会問題を見つけだし、人手ではとても処理できない量のデータから、網羅性が高く高精度なエビデンスを抽出することができるようになった。
⑤より効果的なEBPMを実践するための手順
政策の効果をエビデンスに基づいて検証するために、立案時に予め、政策と期待する効果の因果関係を明確にする論理的なモデルを作成する。
例として、「風が吹けば桶屋が儲かる」といった場合、「風が吹く」ことと「桶屋が儲かる」ことの間で何が起きているのかという筋道を論理的かつ定量的に明示しておく。こうした、政策と効果を結びつける筋道のことを「ロジックモデル」と呼ぶ。この際、狙う効果を明確かつ定量的に判断できる指標を、同時に定義し、政策実行後に、定義した指標に沿ってエビデンスを収集し、モデルに当てはめて検証して、効果の評価や住民への説明責任を果たすために利用する。
ただし、効果があったことを示すエビデンスが得られたとしても、本当に実行した政策によるものなのかは、慎重に判断する必要がある。何故ならば、まったく別の要因で指標が好転した可能性が捨てきれないからだ。そこでEBPMでは、政策を適用する範囲と、適用しない範囲を無作為に決めておき、結果を比較検証する方法が使用される。こうした手法を「ランダム化比較実験」と呼ぶ。
⑥まとめ
EBPMは、これからも多くの実証実験が行政機関内で行われ、知見が蓄積され、その効果も広く周知されることで、あたりまえの考え方として定着していくと予想されます。
今後ICTが更に進歩することで、より効果的で効率的なEBPMの方法が確立されることが期待される。都市の動きをICTによって最適化するスマートシティや、社会課題の解決に向けたDXの取り組みは、とりわけEBPMとの親和性が高いと思われる。EBPMの適用範囲が拡大し、方法も進化することによって、私たちの暮らしや社会はよりよい方向へと変わっていくと考えております。
事業再構築補助金の「加点③経済産業省が行うEBPMの取組に対する協力」については他の事業者もチェックしてくると考えられることから極力協力していくスタンスで申請されるのがよろしいかと思います。
参考文献
Ⅰ事業再構築補助金事務局「令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第2回)」
koubo001.pdf (jigyou-saikouchiku.jp)
ⅡNEC「EBPMとは~国や地方公共団体の行政イノベーション」https://wisdom.nec.com/ja/feature/government/2020032601/index.html