
はじめに「メドテックとは何か?」
メドテックとは、「medicial(メディカル)」と「technology(テクノロジー)」を組み合わせてできた言葉で、簡単にいうと「医療へのIT技術の導入」を指します。ITの武器である情報技術とその量を活用し、医療分野におけるサービスの提供を進化させています。
この記事では、医療の現状、スタートアップ企業が医療業界に持ち込む変革、そして注目すべき成功事例に焦点を当てながら、医療分野におけるスタートアップの役割とその可能性について考察していきます。
日本の医療業界の現状
はじめに現在の日本の医療業界の現状にはどのような課題や特徴があるのか整理します。
超高齢化社会による問題
高齢者65歳以上が総人口の20%以上となった2005年から、日本は20年間、超高齢化社会と呼ばれ続けています。また、今年は高齢者人口増加の過渡期で2025年問題と提起されており、2040年にはピークを迎えるとも言われています。さらに、国の予算の内、33.7%が医療費を含む社会保険費に充てられており、過去50年間で約43倍に。つまり、「他の年齢層に比べ圧倒的に医療の需要が高い高齢者層が総人口の20%以上を占め、日本の予算を圧迫している」ということです。
医療従事者不足
厚生労働省による2025年の推計では、介護職は31万人、介護職は22万人が不足しているといわれています。人材不足の背景には、高齢化による若手就業人口減少、高度医療の発展による人材育成業務の拡大があります。つまり、医療サービスの需要が高まり、高度医療が進歩している一方で、それらを提供できる人材が不足し、需給バランスが崩壊しているということです。
医療テクノロジーの進化
一方で、医療テクノロジーは急速に進化しており、特にデジタルヘルスやAI(人工知能)、ロボティクスなどが注目されています。AIを活用した診断支援や、遠隔診療システムの普及は、医療従事者の負担を軽減し、効率的な治療や予防を可能にします。さらに、ロボット技術を用いた手術支援やリハビリテーション機器により、より精密で質の高い医療の提供を可能にしています。
ジェネリック製品やメドテックの新しい可能性
また、ジェネリック医薬品やメドテック(医療技術)の進化も医療業界に大きな変化をもたらしています。ジェネリック製品は、低コストで高品質な薬剤を提供することで医療費の削減に貢献しています。一方、メドテックは、医療機器やヘルスケアのソフトウェアを通じて、患者のデータ管理や治療の方向性の拡大を実現しています。このような現状がメドテックが注目される背景にもなっています。
スタートアップが医療業界に持ち込む変革
それでは、スタートアップ企業は具体的に医療業界にどのような変革を起こすのでしょうか?主な変革は以下の3つとなります。
新しい治療法の開発
スタートアップ企業は、新しい治療法の開発に積極的に取り組んでおり、特にバイオテクノロジー分野の活躍が期待されています。従来の医薬品開発にかかる時間とコストがAIや機械学習を活用したドラッグデザインや予測モデルの導入により大幅に削減され、開発プロセスが短縮されることでより早く新しい薬剤が市場に登場しています。
医療を必要とする人への迅速なサービスの提供(拡充)
医療を必要としていても手が届かない人、緊急の対応が必要な人、そのような利用者へのより早い対応を可能にすることができます。患者1人当たりのケアにかかる時間を削減しつつ質を保つことで、より医療の提供の規模と精密性が拡大されます。
1人当たりの仕事量を減らし人材不足問題を解消:ケアの向上(患者一人当たりへの公平な医療の提供)
技術の導入により作業効率の向上、業務の分担が可能になることで医療従事者1人当たりのタスクの量や時間が軽減されると、患者1人当たりへのケアが手厚くできることが期待できます。医療従事者の慢性的な不足が解消されるのです。
話題の企業、成功事例
エムスリー株式会社〜日本の医師が認めるオンラインプラットフォーム~
エムスリー株式会社は東証プライムの上場企業で、国内2位の時価総額を誇り、なんと国内臨床医の9割以上が登録しているサービス。医療分野における最新ニュース、海外論文、専門家同士の意見交換の場等に関する情報を提供しており、医療現場の質向上、業務効率に大きく貢献しています。
CYBERDYNE株式会社~筑波大学が生み出した身体機能回復ロボット~
CYBERDYNE株式会社は、筑波大学発の「人支援産業」という新産業分野を生み出した会社で、リハビリや介護の領域で活躍できるロボットを提供する「HAL」を開発。世界から注目されています。HALは、主にリハビリテーションなどの身体機能の回復・改善・補助を行うもので、世界初の装置型サイボーグとして周知されており、このロボットによりALSや筋ジストロフィーなど、疾患により生活の幅が狭まってしまった人が外出できるようになるなど、利用者のQOLを高める効果をもたらしています。
Ubie株式会社~AI問診で診療の効率化と精密性の向上を実現~
Ubie株式会社は2017年に医師とエンジニアによって設立されたスタートアップ企業です。主力の「AI問診」は、患者の症状をもとに最適な診断をサポートし、「メディカル・ディスタンス」(=患者がどの医療機関を受診しようか迷ってしまうこと)の解消を目指しています。さらに、患者の診断精度を高めるだけでなく医師の業務負担も軽減することができるため、全国の医療機関で導入が進んでいます。
株式会社MICIN~オンライン診療で医療アクセスを改善~
株式会社MICINも、先述のUbieに続いて診療分野で医療機関に貢献しているスタートアップです。株式会社MICINが提供するCuronは、遠隔診療によるオンラインプラットフォームを提供することで患者と医師の架け橋となっています。このサービスは医療機関の負担を軽減するだけでなく、医療を必要としている人が、必要としているときにすぐ利用できる、といった点で患者のニーズを捉えており、地域格差を無くすという観点からも、今後より需要が高まっていくでしょう。
まとめ
このように、メドテックの拡大を目指したスタートアップ企業の医療業界への参入が、社会問題を解決しようと活躍しています。
遠隔・AI診療や医療データアクセスの向上、ロボットの開発は、医療の精密性を上げ、業務効率も加速させます。技術の進歩による支援を受けながら、IT技術が医療従事者の代わりにできる仕事は代行し、医療従事者1人当たりの仕事量を削減する。この改革により超高齢化社会による人材不足を解消すると共に、サービスの質を改善させていくのです。
さらに、疾患を有する人にとって一番の不安は情報が無いこと、要は「わからない」という状態です。つまり、今医療の現場に最も必要とされるテクノロジーの力の1つは、情報が欲しいのに入手できない人、方法がわからない人、正しい情報が欲しい人のためのアクセスサービスだと言えます。テクノロジーの進化と企業の開発によって、利用者のニーズを満たしていける、そんな医療業界への介入を期待できます。
参考資料:
・2025年問題とは?日本社会と医療・介護業界に与える影響とその対策 | なるほど!ジョブメドレー
・【2025年最新版】日本の医療費が過去最高の47.4兆円に! – ウマヤン経済研究所
・予算の全体像は(歳入と歳出) 令和6年度(2024年度)予算|NHK
・2024年注目の医療ベンチャー・スタートアップ企業10選:革新的な事業内容と最新の取り組み – xhours
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