話題のゼブラ企業とは?日本のゼブラ企業について徹底解説!!
近年、「ゼブラ企業」という言葉が注目を集めています。ゼブラ企業とは、経済性と社会性を両立する新しいタイプの企業を指します。
ゼブラ企業の解説
「ゼブラ企業」とは、2017年に米国の4人の女性起業家が提唱した概念で、以下の特徴を持つ企業を指します。
- 社会貢献を目的とする
- ステークホルダー全体への還元を重視する
- 革新的な事業や取り組みを行う
- 透明性が高い
ゼブラの語源は、白黒のコントラストが明確なシマウマ(Zebra)です。社会貢献と事業成長の両立をかなえた企業の象徴としてネーミングされました。
ゼブラ企業は、ユニコーン企業のアンチテーゼとして登場しました。ユニコーン企業が短期的な利益追求を優先するのに対し、ゼブラ企業は長期的な視点で社会性と経済性を両立することを目指します。
ローカルゼブラ企業の解説
ローカルゼブラ企業とは、特定の地域に根ざし、地域課題の解決を事業活動の核に据える新しいタイプの企業のことを指します。その主な特徴は以下の通りです。
地域課題へのコミットメント
ローカルゼブラ企業は、地域の課題を深く理解し、その解決に向けて具体的な取り組みを行います。地域社会の持続可能性を高めることを重要な使命と捉えています。
革新的なビジネスモデル
地域課題を解決するために、新しいビジネスモデルや革新的な技術・サービスを活用します。従来の企業活動では対応しきれない課題にアプローチします。
地域との協働
地域住民や自治体、大学、他の企業など、様々なステークホルダーと協働しながら事業を進めます。地域内の連携を重視します。
持続可能性の追求
経済的利益だけでなく、社会的・環境的価値の創出も目指します。地域の持続可能な発展に貢献することを重視します。
地域経済への貢献
地域に根ざした事業を通じて、地域経済の活性化や雇用創出に取り組みます。域内での経済循環を促進します。
つまり、ローカルゼブラ企業は「社会課題解決」と「経済価値創出」を同時に目指す、地域密着型の新しい企業モデルと言えます。地域の多様な主体と連携しながら、地域社会と共生・共創する企業像を示しています。
世界のゼブラ企業 注目企業紹介
Patagonia(パタゴニア)
- 社会貢献を重視する企業姿勢
Patagoniaは環境保護や持続可能性を事業の中心に据え、売上の1%を環境保護団体に寄付する「1% for the Planet」を1985年から実施しています。2016年には「ブラックフライデー」の売上全額を環境保護団体に寄付するなど、社会貢献を重視する姿勢が一貫しています。 - ステークホルダー全体への還元を重視
創業者のイヴォン・シュイナード氏は、2022年9月に「地球が唯一の株主」と宣言し、Patagoniaの全株式を非営利団体に譲渡しました。会社の利益を環境保護に充てることで、株主だけでなく地球全体への還元を重視する姿勢を明確にしました。 - 革新的な事業や取り組み
Patagoniaは環境に配慮した革新的な素材開発や、持続可能な農業を支援する食品事業「Patagonia Provisions」など、従来の枠にとらわれない新しい取り組みを積極的に行っています。 - 長期的な視点での持続的成長を重視
短期的な利益よりも、環境保護という長期的な目標を優先し、事業を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。創業から50年近く経った今も、次の50年に向けて環境危機への対策を強化する姿勢は、長期的視点を重視するゼブラ企業の特徴と合致します。
以上のように、Patagoniaは利益よりも社会貢献を重視し、革新的な取り組みで持続可能性を追求する典型的なゼブラ企業と言えるでしょう。企業の社会的責任が問われる中、Patagoniaの先進的な事例は多くの示唆を与えてくれます。
Tony’s Chocolonely(トニーズ・チョコロネリー)
Tony’s Chocolonelyは、オランダ発のフェアトレードチョコレートブランドです。カカオ農家の貧困と児童労働の問題解決に取り組んでいます。
- 社会問題解決へのコミットメント
Tony’s Chocolonelyは、ガーナとコートジボワールのカカオ農家の生活改善と、児童労働の撲滅を目指しています。フェアトレード認証カカオ豆の使用や、農家への直接支払いなどを通じて、サプライチェーンの改善に取り組んでいます。 - ステークホルダー全体への価値提供
カカオ農家の所得向上だけでなく、消費者に対しても高品質のチョコレートを提供することで、ステークホルダー全体に価値を提供しています。 - 社会的インパクトの可視化
Tony’s Chocolonelyは、年次報告書でカカオ農家の所得向上や児童労働撲滅の進捗を開示するなど、自社の取り組みの社会的インパクトを可視化しています。
Allbirds(オールバーズ)
Allbirdsは、ニュージーランドのメリノウールを使用した環境に優しいスニーカーを製造・販売するサステナブルなフットウェアブランドです。
- 持続可能な素材の活用
Allbirdsは、メリノウール、ユーカリ、サトウキビ、カシミヤなど、環境負荷の低い天然素材を使用しています。石油由来の素材の使用を最小限に抑え、持続可能なサプライチェーンの構築に取り組んでいます。 - カーボンニュートラルの達成
2019年に、Allbirdsはカーボンニュートラルを達成しました。製品のライフサイクル全体で発生する二酸化炭素を測定し、オフセットすることで、環境へのインパクトを最小化しています。 - 透明性の高い情報開示
Allbirdsは、製品のカーボンフットプリントを開示するなど、サプライチェーンの透明性を重視しています。消費者に対して、製品の環境影響に関する情報を積極的に提供しています。
環境保護や社会問題解決を事業の中核に据え、長期的視点で持続可能な成長を目指すゼブラ企業の好例と言えます。Patagoniaと同様に、社会貢献と企業利益の両立を図る彼らの取り組みは、これからの企業のあり方を示唆するものでしょう。
Zebras Unite(ゼブラス・ユナイト)
ゼブラ企業のコミュニティとして2017年に発足。ゼブラ企業同士のネットワーキングやナレッジシェアリングを促進するとともに、ゼブラ企業と投資家のマッチングなども行っている。ゼブラムーブメントを牽引する存在として、ゼブラ企業の認知度向上と生態系の構築に取り組んでいる。
日本のゼブラ企業 注目企業紹介
日本でも、SDGsやサステナビリティを重視し、社会課題の解決に取り組む企業が増えています。以下に代表的な企業を紹介します。
株式会社TeaRoom
- 社会貢献を重視する企業姿勢
TeaRoomは「お茶で対立のない社会を作る」というミッションを掲げ、お茶を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。具体的には、衰退する日本茶産業の活性化や、お茶の文化的価値の普及などに注力しています。 - 革新的なビジネスモデル
TeaRoomは、お茶の生産から消費までを一気通貫で手掛けるユニークなビジネスモデルを構築しています。静岡の茶畑を事業承継し、お茶の生産を自社で担うことで、サプライチェーン全体を通した社会課題解決を目指しています。 - ステークホルダー全体への還元を重視
創業者の岩本涼氏は、お茶農家の所得向上や、消費者へのお茶の新しい価値提供など、ステークホルダー全体の利益を重視する姿勢を示しています。利益追求だけでなく、お茶に関わる人々への還元を大切にしています。 - 長期的な視点での持続的成長を重視
TeaRoomは、短期的な利益よりも、お茶産業の持続可能性という長期的な目標を優先しています。事業を通じて、お茶の文化的価値を次世代に継承していくことを重視しています。
お茶という日本の伝統文化に着目し、その本質的な価値を活かして社会課題解決に挑むTeaRoomの取り組みは、ゼブラ企業の先進的な事例の一つと言えるでしょう。
株式会社バイオーム
世界中の生物や環境情報を集めてビッグデータを形成し、生物多様性の保全を目指す。一般消費者向けにゲーム感覚で生物多様性について考えるきっかけとなる「Biome」や、研究機関向けの生物・生態系調査プラットフォーム「BiomeSurvey」を提供している。
- 社会貢献を重視する企業姿勢
バイオームは「生物多様性の保全を社会の当然に」をビジョンに掲げ、生物多様性の価値を社会に浸透させることを目指しています。生物多様性情報プラットフォームの構築や、環境調査ツールの提供など、事業を通じて環境保全に直接的に貢献しようとしている点が特徴的です。 - 革新的なビジネスモデル
生物分布のビッグデータを収集・解析し、環境保全のためのビジネスインフラを作ろうとしている点が革新的です。これまで客観的な指標がなかった生物多様性の分野に、データに基づくアプローチを取り入れることで、新しい環境ビジネスの可能性を切り開こうとしています。 - 長期的な視点での持続的成長を重視
創業者の藤木氏は、生物多様性の保全を継続・推進させるには、保全すること自体をビジネスにする必要があると考えています。短期的な利益よりも、環境保全という長期的な目標を優先し、持続可能な社会の実現を目指す姿勢が見られます。 - 経済性と社会性の両立を目指す
バイオームは環境保全に関わる事業しか行わないことをポリシーとしており、売上の増加が環境へのインパクトの増加と同等だと捉えています。経済性と社会性を一体化させたビジネスモデルを追求している点も、ゼブラ企業の特徴と合致します。
日本のローカルゼブラ企業 注目企業紹介
日本でも、地域に根差し社会課題の解決に取り組むローカルゼブラ企業が増えています。以下に代表的な企業を紹介します。
株式会社巡の環(めぐるのわ)
宮崎県日南市で、地域の食文化を守り、地域活性化に取り組む企業。地元の農家と連携し、規格外の農作物を活用したレストランや加工品の製造・販売を行っている。食品ロス削減と地域農業の持続可能性向上の両立を目指している。
株式会社ワカツク
石川県輪島市で、伝統的な輪島塗の技術を活かしたプロダクトのデザイン・製造・販売を行う企業。職人の高齢化や後継者不足という課題に対し、デザイン性の高い新商品開発で新たな顧客層を開拓。伝統産業の持続可能性向上に取り組んでいる。
株式会社西粟倉・森の学校
岡山県西粟倉村で、森林の保全と活用を通じた地域活性化を目指す企業。森林の管理や木材の加工・販売、自然体験ツアーの提供など、森林資源を活用した事業を多角的に展開。環境保全と経済活動の好循環の創出を目指している。
津南醸造株式会社
新潟県津南町で、地元産の米や水を使った日本酒の製造・販売を行う企業。2024年には、魚沼産コシヒカリを使用した『郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition』を発売。地域資源の活用と、地域ブランド価値の向上に取り組んでいる。
日本でゼブラ企業が少ない理由
日本のゼブラ企業が世界と比べて少ない主な理由は以下の通りです。
理由①:社会貢献よりも利益追求を優先する風潮
日本企業は伝統的に株主重視の経営を行ってきたため、短期的な利益を追求する傾向にあります。一方、ゼブラ企業は長期的視点に立ち、社会貢献を重視するため、日本の企業文化とは相性が良くありません。
理由②:ゼブラ企業を評価する仕組みが未整備
ゼブラ企業は社会へのインパクトを重視するため、従来の財務指標だけでは評価が難しい面があります。日本ではまだゼブラ企業を適切に評価する仕組みが整っておらず、投資家からの理解も得にくい状況です。
ゼブラ企業とローカルゼブラ企業の違いは?
- 活動エリア
ゼブラ企業は活動エリアを特定していませんが、ローカルゼブラ企業は特定の地域を拠点に活動しています。ローカルゼブラ企業は地域に根差し、その地域特有の社会課題の解決に取り組むことを重視します。 - 企業規模
ゼブラ企業には大企業から中小企業まで様々な規模の企業が含まれますが、ローカルゼブラ企業は地域密着型で事業を展開するため、大半が中小企業です。 - 重視する課題
ゼブラ企業は社会全般の課題解決を目指すのに対し、ローカルゼブラ企業は過疎化、高齢化、地場産業の衰退など、地域特有の課題解決により重点を置いています。 - ステークホルダーとの関係性
ローカルゼブラ企業は地域の企業や金融機関、自治体、住民など、地域の多様なステークホルダーとの緊密な連携を重視する傾向があります。地域エコシステム内での共創を重要視しています。 - 行政の支援策
地方創生や地方経済活性化の文脈から、ローカルゼブラ企業に特化した行政の支援策が打ち出されています。中小企業庁が「ローカルゼブラ企業」の定義や支援の在り方をまとめた「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を策定するなど、ローカルゼブラ企業の創出・育成に向けた動きが活発化しています。
つまり、ローカルゼブラ企業はゼブラ企業の一形態であり、地域特性を踏まえ、地域課題解決と地域経済の持続的発展の両立を目指す点に特徴があると言えます。地域に根差した社会貢献と事業活動を同時に追求する、ローカルゼブラ企業への注目度は高まっていくと考えられます。
日本政府の取り組み
2023年6月に閣議決定された「骨太の方針」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、日本政府は「地域の社会課題解決の担い手となるゼブラ企業の創出とインパクト投融資の拡大」を促進していく方針を明らかにしました。ローカルゼブラ企業の重要性を国家戦略として位置付けたと言えます。
骨太の方針や新しい資本主義のグランドデザインでローカルゼブラ企業の推進を明記
2023年度に続き2024年度も「骨太の方針」「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」にゼブラ企業の推進が明記されました。地域の社会課題解決の担い手となるゼブラ企業の創出やインパクト投融資の拡大を促進していく方針が示されています。
中小企業庁が「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を策定
中小企業庁は2024年3月、ローカルゼブラ企業や地域課題解決事業の重要性と概念を整理した「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を策定・公表しました。多様な関係者との協業を実現し、社会的インパクトの可視化を通じて必要な資金や人材が地域に流れ、ローカルゼブラ企業を創出・育成するエコシステムを構築するための基本的な考え方をまとめています。
ローカルゼブラ企業を創出・育成する実証事業を実施
中小企業庁は2024年、「地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム構築実証事業」として、ローカルゼブラ企業を創出・育成する仕組み構築を支援する実証事業20件を採択しました。先行事例の実証支援等を通じて、事業モデルの整理、支援手法や社会的インパクトの評価手法の確立に取り組んでいます。
まとめ
日本でもゼブラ企業への注目が高まりつつあります。利益追求を最優先とするのではなく、社会課題の解決に真摯に取り組む企業の必要性が認識され始めています。世界と伍していくためには、社会貢献を重視する企業文化の醸成や、ソーシャルインパクト評価の確立など、引き続き官民一体となった取り組みが求められるでしょう。日本から新たなゼブラ企業が誕生し、持続可能な社会の実現に貢献する日も近いかもしれません。