ストックオプションにはいくつか種類がありますが、スタートアップ・ベンチャー企業の活用メリットも高く、注目されているのが『信託型ストックオプション(SO)』です。信託を利用した報酬制度で、これまでのストックオプションでの課題を解決する手段にもなっています。2022年2月15日の日本経済新聞では2021年の新規株式公開(IPO)企業で22社が導入し2020年より導入企業が3倍に増えたという報道もあり、市場の広がりを商機に専用システムの開発に乗り出す新興勢も出ているとのことです。この記事では信託型ストックオプションを詳しく解説していきます。
信託型ストック・オプションとは
オーナーや経営者(=委託者)が、信託会社など(=受託者)に資金を預け、発行会社の時価発行新株予約権を将来、役員や従業員など(=受益者)に、客観的な業績評価に基づいて新株予約権を配るスキームです。
信託型ストックオプションのメリットとは
上場前など企業の発行したストックオプションをあらかじめ信託しておき、会社への貢献度をポイントなどで評価して、ポイントに応じてストックオプションを付与するという仕組みから、企業への貢献度に合わせて付与することができ、付与者の間で不公平感が少なくなります。
また信託型ストックオプションは、受託者が発行会社に対し、信託財産である金銭を払い込むため有償型ストックオプションとして扱われます。
無償の場合は最大55%の推進課税が発生しますが、税務上は株式売却時の20%課税のみとなるため、付与者にとっても税負担が軽いのもメリットです。
信託型ストックオプションのデメリットとは
信託型ストックオプション発行には、法律や税務上の要件を満たす必要があります。
不公平感をなくすためのルールづくりや発行会社の株価・ストックオプションの公正価値の算定など、事前の計画作りが非常に大切でかつ手間になるため、導入までの時間は一定掛かることが想定されます。また、各専門分野への相談や評価機関へのフィー、また信託会社への委託コストなど費用もかかります。
まとめ
事業をゼロから立ち上げるスタートアップや、まだ設立から間もないベンチャーなどの場合、役員や従業員に対して金銭報酬を十分に支払えないなどの課題を解決する手段になりそうです。以前よりストックオプションの活用は有効的なカードの一つでしたが、従来のストックオプションは付与対象者の追加等の柔軟性において難点もある中、信託型ストックオプションはそうした難点を克服する画期的なスキームと感じます。一方で、事前の計画、付与設計がしっかりしていないと企図していた通りの運用や効果が期待できないリスクもあり、導入後の再設計をするケースもあります。
ストックオプションの活用を考える際には是非お気軽にお問い合わせください。