少人数私募債とは、限られた人数と一定の条件内で、発行手続きが簡略化されている社債の一つです。近年では銀行からの融資や公募債発行が容易でない中小企業向きの社債として注目されています。
この記事では、少人数私募債の特徴やメリット・デメリット、発行から償還までの流れを徹底解説します。
うまく利用することができれば、資金調達方法として非常に有効な手段なので、是非この記事で少人数私募債をマスターしましょう!
私募債とは?
少人数私募債の解説に入る前に、「私募債とはそもそもなんだろうか」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。今回はそのような方のためにも「私募債」から解説していきます。
「私募債」とは、「社債」の一種で、証券会社などの金融機関を通さずに市場から直接資金調達を行う方法です。
ちなみに「社債」とは、株式会社が主に資金調達を行う際に発行する債券のことです。
「社債」には大きく分けて二つあり、不特定多数を相手に発行される債券が「公募債」、
そして特定の少人数のみに向けて発行される債券が「私募債」です。
「公募債」を発行する際には金融商品販売法に基づき、対象有価証券の性質についての情報開示などの詳細な規定があります。それに対し「私募債」の場合には情報開示などの必要がなく、発行手続きが非常に簡略化されているのが大きな特徴の一つです。そのため、中小企業やベンチャー企業などの小規模な会社でも利用がしやすいものとなっています。
少人数私募債とは?
ここまでで、私募債に関する基本的事項はおわかりいただけたかと思います。
ではここから本題である「少人数私募債」について解説していきます。
比較的な小規模な資金調達方法である私募債には2つの種類があります。
一つは「プロ私募債」と呼ばれるもので、適格機関投資家(投資のプロ)のみを募集対象とし、要件を満たしていれば人数は問いません。
そしてもう一つの私募債が「少人数私募債」です。先ほどのプロ私募債とは逆に、こちらは募集対象である投資家の性質は問いません。その代わり、募集人数を「少人数(50人未満)」と限定します。
発行総額は一般的に1億円未満であり(もし1億円以上を募集する場合には金融商品取引法に基づく義務が発生)、募集対象を会社関係者(取引先や縁故者など)としています。
以上のことをまとめた上で、少人数私募債の基本的な特徴は以下のようになります。
・募集対象人数を6ヶ月で通算50人未満にすること
・対象者を取引先や知人などの特定の縁故者にすること
・発行総額は原則として1億円未満
・償還期間や利息は会社側が決定可能
・取締役会or株主総会の決議が必要
・引受人が限定されるため、一人当たりの社債購入金額が大きくなる傾向にある
・有価証券報告書等の発行手続きが簡略化されているため、短期間での発行が可能
・毎月の返済がなく、長期間の資金調達も可能
少人数私募債を発行する際の注意点
いくら募集対象を知り合いなどの特定の縁故者にするとはいえ、少人数私募債を発行する際にはいくつかの注意点があります。
・一括償還のため、莫大な資金が必要になることが多い
・「事業計画書」の作成
・社債発行後の定期的なコミュニケーション
毎月の返済がないという点ではメリットとなりうるかもしれません。しかし逆にいえば、「償還は一括である」ということになります。したがって、償還時に会社運営資金に大きな影響がでないかどうかのシュミレーション、見積もりをしておくことをお勧めします。
「少人数私募債」の大きな特徴の一つは、「募集対象が縁故者である」ということです。つまり会社と投資家の間には「信頼関係」が成り立っている必要があり、その信用を獲得するためには「事業計画書」が必須なのです。具体的には、資金調達の目的である「資金用途」を明確にし、次に償還までの期間も返済計画を作成します。
先ほども述べたように、少人数私募債は信用の上で成り立っています。そのためにも社債発行後の、引受人に対する定期的なコミュニケーションは必須です。年に数回、事業計画書に基づく進捗や課題、成果報告などを行なうことで、良好な関係を保つことができるでしょう。
発行から償還までの流れ
では具体的な少人数私募債の発行から償還までの流れを見ていきましょう。
1. 事業計画・募集要項等の作成 | 資金用途・募集要項・勧誘資料作成 |
2. 少人数私募債発行決議 | 取締役会または株主総会での決議 |
3. 少人数私募債の引受人募集 | 個別訪問や説明会による勧誘 |
4. 発行総額の確定・募集決定通知書送付 | 申込み締切・金額確定・募集決定通知書送付 |
5. 申込額の受領・社債振込金受領証送付 | 引受人からに入金確認・受領証送付 |
6. 社債原簿管理 | 満期償還まで社債の管理 |
7. 利息支払い | 期日までに利息を振込・支払通知書送付 |
8. 満期償還 | 各引受人に一括償還・完了 |
一つ注意しなければならないことは、引受人を募集する際に自社のウェブサイトやSNS等で募集してはいけないということです。これは、「私募」ではなく「公募」に該当してしまうためです。
募集要項の決め方
募集要項を決める際にも、重要なことは「信頼・信用」です。
この信用を得るためには、具体的な募集要項の決め方を知っておく必要があります。
資金調達額
まず最初に決めることとしては、「資金調達の目的」と「資金調達額」です。
募集人数と必要な調達金額から、募集総額と1口あたりの金額を決定します。
例えば、1口あたりの額を150万円にした場合、最大調達額は「7,350万円」となります。
※最大発行が49口までのため
利率
少人数私募債の利率は会社側が自由に設定することができます。
一般的には2.0%〜5.0%に定められており、会社側も受取人側も少人数私募債によるメリットを最大限活かすことができるような利率にならなければなりません。
ちなみに、
大手企業の社債(公募債)は年率2.0%
銀行融資やビジネスローンは年率5.0%~15.0%
になることが一般的です。
また利息の支払い回数は、支払い業務の手間や振込手数料を加味して「年1回」が一般的ですが、2回や3回に設定する会社も珍しくありません。
償還期間
償還期間に関しても、会社側が自由に設定することが可能です。
資金調達の目的によっても異なりますが、運転資金であれば1~3年、設備資金であれば3~5年という基準で検討するのが妥当でしょう。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。今回の記事では、少人数私募債の特徴やメリット・デメリット、発行から償還までの流れについてご紹介いたしました。
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