【失敗から学ぶスタートアップの教訓】ジャスティン・カンのメッセージとは?
ジャスティン・カンという人物をご存知でしょうか。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ゲーム実況ストリーミングサービスの「Twitch」を立ち上げ、2014年9月にAmazonに9億7000ドル(約1,000億円)で売却している、スタートアップ界隈では著名な起業家です。
※twitter画像より引用
2017年に法律サービスをサブスクリプションモデルで提供する事業「Atrium」(アトリウム)を立ち上げ、2018年に6,500万ドルの大型資金調達を行い、エンジニアや大物弁護士を増強したものの、2020年3月に事業を閉鎖。
この記事ではジャスティン・カン氏がツイートした、「創業者・経営者にとって大切なこと」をまとめました。
ジャスティン・カンとは
ジャスティン・カン(Justin Kan)は1983年7月16日生まれ、イェール大学卒業後。
アメリカのインターネット起業家兼投資家です。
2007年、Justin.tvというライブビデオプラットフォームを立ち上げ、誰でもライブビデオストリームを公開できるプラットフォームをつくりあげました。2007年当時で毎月3,000万人以上のユニークユーザーを抱える世界最大のライブビデオプラットフォームの1つとなっています。
その後、Justin.tvはソーシャル、テック、スポーツ、エンターテインメント、ニュース&イベント、ゲームなどの各コンテンツカテゴリの構築を行い、特にゲームコンテンツは大きく成長し、サイト内で最も人気のあるコンテンツとなったため、Justin.tvとは別のサイトでゲームコンテンツ用ブランドを立ち上げました。
2011年6月に立ち上げた「Twitch」です。
Twitchはその後、2014年8月にAmazon.comに9億7000万ドルで買収されました。
そして2017年、”機械学習”(AI)によって供給新興企業のための法律サービスと資金調達のアドバイスを提供に焦点を当てた「Atrium」(アトリウム)を立ち上げました。設立後、1,300万ドルを調達し、2018年9月には6,500万ドルの資金調達を行いましたが、2020年3月に操業を停止しました。
ジャスティン・カンの失敗から学ぶ、経営者の心得
Atriumの操業停止後、2021年1月にツイートが流れました。
そこでジャスティン・カンは「たくさんの間違いをした」と述べています。
そして「最大の教訓は何であるか」を語っています。スタートアップにとって、とても大事な教訓と考え、以下に要約をまとめます。
※解釈・訳し方は個人差があると考えられ、弊社としての見解であることを承知下さい。
スタートアップの教訓①ミッションから始める
事業を立ち上げた後に、ミッションを描くことはとても難しく、企業が存在する明確な理由(創業の理由)から始めて、クライアントおよび参画者(従業員)を”フィルタリング”する必要がある。
フィルタリングとは選別して排除することです。創業する段階から誰に向けた何のサービスで、それは”誰と”成し遂げるのか?そしてなぜ成し遂げるのか?創業者は明確にしなければならないという意味です。
スタートアップの教訓②リモート中心で創業するべき
創業者にとって、オフィスや家賃のコストは、営業レバレッジを大幅に悪化させます。才能のある人々は、場所に関して柔軟な仕事を選ぶべきと言っています。2021年の世界では、市場ではリモートの方が優れているという見解です。
スタートアップの教訓③R&Dのスキップはしてはいけない
R&Dとは自社の事業領域に関する研究や新技術の開発、自社の競争力を高めるために必要な技術調査や技術開発といった活動を行うことで、「Research and Development」の略称です。これをスキップしようとすると、他社との差別化ができなくなる可能性が高くなる、または他社と差別化出来ている部分を見逃す可能性が高く、またこの見落としはお金で解決するのは非常に難しいです。
スタートアップの教訓④本質的な動機を持っているもののみ取り組む
そうしないと、困難な時期や自分の目標が変わったときにモチベーションが失われます。従業員や関係各所が増えるほど、フィードバックを行い、経営方針を変更することが難しくなります。創業者のトップダウンは本物ではなく、効果がありません。
スタートアップの教訓⑤ビジネスモデルの反復を十分に迅速に行う
製品市場の適合性が不足している状況で、資金をどれほどつぎ込んでもほとんど機能をしません。より迅速に定額の時間モデルに移行しながらビジネスモデルを繰り返す必要があります。ビジネスモデルの反復を十分に、迅速に行うことができないと淘汰されていきます。
大事なことは「私たちは誰のためにビジネスモデルを構築しているのか」を具体的かつ冷静に繰り返し問うべきです。
スタートアップの教訓⑥市場を見極める
可能な限り市場の状況を見極める必要があり、「市場のように見えるがそうではないところ」を避けなければなりません。
以上がジャスティン・カンの教訓と見て取れました。
Atriumについて~教訓の背景~
法律業界がいまだ抜け出せていない課題の一つに、クライアントに対して実稼働時間ベースで報酬を請求する「タイムチャージ」の慣習があります。成果がどうであろうと、弁護士に支払う報酬は実稼働となるというものです。ここの問題提起として、報酬を一律化し、サブスクリプションモデル化を目指していたのがAtriumです。
法律業務をエンジニアと法務書記(または司法書記)によって徹底的に機械化しテックタッチにすることでこれを実現しようとしました。
背景として、法律への対応はスタートアップにとって大きな障害になっていて、弁護士事務所から送られてくる請求書は創業者にとって突然の税金のようなもので、こうした現状を変えたいという考えがありました。
しかし、現実は甘くなく資金調達し、
・実績あるテック系創業者
・優秀な複数の弁護士
・豊富な資金
上記の条件が整った上で、サブスク化に成功しませんでした。