2025/令和7年度経済産業省の概算要求:日本の産業政策 GXとイノベーション戦略
日本は、令和7年度において経済産業省が提案する概算要求を通じて、次世代の産業構造と社会基盤の構築に向けた重要なステップを踏み出そうとしています。
本ブログでは、その中でも特に注目されるGX(グリーントランスフォーメーション)とイノベーションに関する戦略に焦点を当て、未来を見据えた日本の取り組みを考察します。
GX:持続可能な未来を目指して
GX、すなわちグリーントランスフォーメーションは、気候変動への対応としてエネルギー供給の脱炭素化を目指す重要な取り組みです。令和7年度の概算要求では、GX推進のために総額9,818億円が計上されており、これは前年から大幅に増加しています。具体的には、省エネルギー投資の促進、再生可能エネルギーの供給拡大、産業分野における燃料転換支援、低炭素水素の社会実装の推進など、多岐にわたる施策が展開されます。
この中でも特に注目すべきは、再生可能エネルギーの供給拡大です。政府は洋上風力発電や地熱発電の推進を加速させるとともに、太陽光発電の大量導入を目指した技術開発にも力を入れています。これにより、エネルギーの自給率向上と貿易収支の改善が期待されており、日本が脱炭素社会へとシフトするための基盤が整備されつつあります。
GX(グリーントランスフォーメーション)関連政策と予算
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援
- 予算額: 1,743億円
- 概要: この政策は、省エネルギー投資を推進し、エネルギー消費構造の転換を図ることを目的としています。具体的には、省エネルギー設備への更新を促進するための補助金制度が設けられています。
再生可能エネルギーの供給拡大
- 予算額: 777億円(GXサプライチェーン構築支援)
- 概要: 再生可能エネルギーの供給を拡大するために、洋上風力発電の導入促進や、太陽光発電及び蓄電池導入支援など、再エネ事業の推進に対する支援が行われます。
産業分野での燃料転換支援
- 予算額: 870億円
- 概要: 排出削減が難しい産業におけるエネルギー・製造プロセスの転換を支援することを目的としています。これにより、化石燃料から低炭素エネルギーへの移行を促進します。
低炭素水素の社会実装推進
- 予算額: 838億円
- 概要: 持続可能な航空燃料(SAF)の製造・供給体制を構築するための支援が行われ、航空業界の脱炭素化を目指します。
イノベーションと新陳代謝の加速
日本の産業競争力を維持し、さらに高めるためには、継続的なイノベーションが不可欠です。令和7年度の概算要求では、イノベーションの促進と産業の新陳代謝を加速させるために3,135億円が要求されています。この資金は、主にAIや半導体技術、バイオ産業などの先端分野における研究開発や、スタートアップ企業の支援に充てられる予定です。
特にAI分野では、高効率な計算資源の開発と国内外の優れた企業や人材によるイノベーションを促進するための環境整備が進められています。また、バイオ産業においては、再生医療や遺伝子治療の産業化を目指した技術開発支援が行われ、日本が世界のフロンティア技術をリードするための足掛かりとなるでしょう。
さらに、スタートアップ企業の育成にも注力しており、ディープテックやGX関連のスタートアップ支援を強化することで、新たなユニコーン企業の誕生が期待されています。
デジタル基盤技術・自動車・バイオ産業関連政策と予算
半導体サプライチェーンの強靭化
- 予算額: 54億円(次世代コンピューティング技術開発)
- 概要: 次世代コンピューティングの技術開発を支援することで、国内の半導体サプライチェーンの強靭化を図ります。
電動車普及と蓄電池技術の開発
- 予算額: 1,000億円(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)
- 概要: クリーンエネルギー自動車の普及促進を目的として、車両購入とインフラ整備に対する補助金が提供されます。また、蓄電池の製造基盤強化や次世代電池の技術開発も支援されます。
バイオ医薬品・再生医療の産業化支援
- 予算額: 39億円(再生医療・遺伝子治療の基盤技術開発)
- 概要: バイオ医薬品や再生医療、遺伝子治療の産業化を目指した基盤技術の開発が支援され、日本が医療分野での技術革新をリードすることを目指します。
イノベーションと新陳代謝の加速関連政策と予算
- 先端技術開発の促進
フロンティア技術の探索・育成支援
バイオ、量子、航空機、宇宙分野への投資 - スタートアップ支援の強化
グロースステージの成長支援
研究開発予算におけるスタートアップ支援の拡大
市場環境の整備 - 重点分野への投資
創薬基盤技術開発
再生医療・遺伝子治療
次世代医療機器開発
GX分野のディープテック支援 - モビリティ分野の革新
次世代航空機システム開発
次世代空モビリティの実現 - AI・コンピューティング技術の向上
高効率・高速処理技術の開発
省エネAI半導体システムの開発 - デジタルトランスフォーメーションの推進
「ウラノス・エコシステム」によるデータ連携の実現
無人自動運転等のCASE対応支援 - 国際競争力の強化
国際ルール形成への参画
標準化推進事業の実施
スタートアップ支援
- 予算額: 400億円(GX分野のディープテック・スタートアップ支援)
- 概要: 特にGX分野におけるディープテック・スタートアップの支援を強化し、次世代のユニコーン企業を育成するための資金が提供されます。
- ヘルスケアスタートアップ支援: 新たなビジネスの創出を促し、介護需要に対応する多様なサービスを整備します。また、ヘルスケアの国際展開を推進する仕組みを構築します。
- クリエイター育成とクリエイティブ産業の振興: 正規流通の支援や模倣品対策を行い、海外での戦略的展開を促進します。これにより、クリエイティブ産業の国際プレゼンスを強化します。
- 知財を活用した中小企業支援: 「知財経営支援ネットワーク」を活用し、地域の知財エコシステムを構築することで、中小企業の稼ぐ力を向上させます。
さらに、以下の具体的な事業が含まれています。
- 医工連携グローバル展開事業: 15億円(新規)
- 次世代型医療機器開発等促進事業: 24億円(新規)
- コンテンツ海外展開促進事業: 11億円(文化庁と共同)
- 伝統的工芸品支援事業: 13億円
- サービス産業等の基盤整備: 9億円
- 中小企業等海外展開支援事業: 11億円
- 知財経営支援モデル地域創出事業: 3億円
- 工業所有権情報・研修館運営費交付金: 121億円
AI・次世代技術の開発支援
- 予算額: 1,691億円(イノベーションエコシステム構築支援)
- 概要: AI技術や量子技術、次世代航空機、宇宙産業など、先端技術分野でのイノベーションを促進するため、研究開発支援が行われます。
4. 経済安全保障の確保関連政策と予算
サイバーセキュリティ対策の強化
- 予算額: 57億円(産業サイバーセキュリティ対策強化)
- 概要: 産業全体のサイバーセキュリティを強化するための環境整備が進められます。これにより、サプライチェーンの安全性を確保し、産業基盤の強化を図ります。
日本の未来を切り拓く
令和7年度の経済産業政策は、GXとイノベーションを柱に据え、持続可能な未来と産業競争力の強化を目指しています。これらの取り組みが実現することで、日本は脱炭素社会へと進みつつ、世界の技術競争においても優位性を保つことが可能となるでしょう。
私たちは、政府のこうした先見的な政策を支持し、企業や個人がそれぞれの立場でこれらの変革に貢献していくことが求められています。日本の未来を共に切り拓くために、私たち一人ひとりが今できることを考え、行動に移すことが重要です。
まとめ
令和7年度の経済産業省の予算要求は、GXの推進、デジタル技術の強化、スタートアップ支援、そして経済安全保障の確保といった重要な分野に集中しています。これらの政策は、日本が持続可能な経済成長を遂げるための基盤を築くものであり、今後の日本の経済発展に大きな影響を与えるでしょう。
このように、具体的な産業政策と予算内容を理解することで、日本が直面する課題とその解決に向けた取り組みがより明確になります。これからの政策動向に注目し、私たち一人ひとりがどのように貢献できるかを考えることが重要です。
参考資料:令和7年度 経済産業省関係 概算要求等概要(PDF形式:961KB)