エンジニアとは、「工学(エンジニアリング)に関する専門的な知識やスキルを持った人材」のことを言います。IT技術が進んだ現代では、インターネット関係のITの専門知識やスキルを備えた「ITエンジニア」が活躍していますが、日本ではエンジニア不足が大きな問題となっています。この記事では、日本のエンジニア不足の背景には何があるのか、エンジニアの市場需要について、世界と日本を比較し、今後の課題まで詳しく解説します
世界から見るエンジニア市場
世界のエンジニア市場の動向
ソフトウェアエンジニアにとって、人気のあるサイトの1つであり、エンジニアリングに関する情報を発信するHacker Newsで、2020年度から求人投稿企業数の推移(下表)について見比べてみると、2020年4月から採用企業数が、670社から640社へと大きく減少していることがわかります。これは、新型コロナウイルスの発生と共に、多くの国と地域で始まったロックダウンが始まった時期と重なっています。そのため、採用企業数の大幅な減少は、新型コロナウイルスが原因であると推測することができますね。
出典)https://blog.pragmaticengineer.com/is-there-a-drop-in-software-engineer-job-openings-globally/
では、求人の投稿企業数の減少と反対に、求人広告を出した企業が増加した時期はいつでしょうか?2020年2月に比べ、求人広告の投稿が150%増えた時期をピークとみなすと、2021年6月から11月がピークであることがわかります。これもまた、新型コロナウイルスによる行動制限が少しずつ緩和していった時期と重なっています。
出典)https://blog.pragmaticengineer.com/is-there-a-drop-in-software-engineer-job-openings-globally/
最もエンジニア市場が活発な国はアメリカ・カナダ・オーストラリア
次に、IndeedのHiring Labによって公開されたデータソースであるIndeed Job Postings Indexを元に、国別にエンジニアの市場需要について見ていきましょう。Indeed Job Postings Indexは、国別、カテゴリー別に細分化された求人指数を示すもので、「ソフトウェア開発者」カテゴリーにおける求人情報を分析した結果、アメリカ、カナダ、オーストラリアが「最も活発」な市場であることがわかりました。
特にオーストラリアのエンジニア市場は他国に比べて、需要量増加の傾向が顕著です。2021年半ばから2022年半ばの間が求人数のピークであり、2023年3月の時点で、オーストラリアの求人掲載数は2020年2月の時点と比べてほぼ倍増しています。一方、アメリカやカナダの掲載数は2020年2月とほぼ同数で推移しています。
出典)https://blog.pragmaticengineer.com/is-there-a-drop-in-software-engineer-job-openings-globally/
オーストラリアや、カナダ、アメリカほどではなくても、ドイツも比較的、エンジニア市場が活発であると言えます。同じヨーロッパに位置し、地理的に比較的近いイギリスと、ドイツのエンジニア市場を比べることで、ドイツの特異なエンジニア市場を知ることができます。
イギリスのエンジニア市場では、2020年2月の1.5倍にも達することなく求人数が推移しているのに対し、ドイツではイギリスよりも急速に求人数が増加し、2020年2月のレベルを大きく上回っています。この傾向は、ドイツの厳格な労働者保護策が関係していると考えられます。景気後退期でも採用活動が持続されている可能性がありますね。
出典)https://blog.pragmaticengineer.com/is-there-a-drop-in-software-engineer-job-openings-globally/
日本のエンジニア市場
では、日本のエンジニア市場の需要はどうでしょうか?
出典)https://blog.pragmaticengineer.com/is-there-a-drop-in-software-engineer-job-openings-globally/
上のグラフを見ると、日本のソフトウェア開発者求人広告数は2020年2月の3倍以上に増加しており、この上昇傾向は継続しています。読んでいる皆さんの中にも、お気づきの方がいるかもしれませんが、この傾向は、他のグローバル市場のトレンドとは逆を行く非常に不可解な市場傾向を形成しています。グラフを一目見ても、わかるように、他の国々のグラフは富士山のような形のグラフを形成している反面、日本は常に増加傾向にありますね。このような傾向の要因について、東京を拠点とするAndroidエンジニアのイザディ・エギザバル・アルコルタ氏は、
「日本における異例の数字は、Indeedが日本市場での人気が高まっていることが一因だと思います。Indeed Japanの広告は、YouTubeや東京の街頭などでも頻繁に目にします。この事実と会計年度の予算編成のタイミング(4月と10月の新年度と半期ごとの予算査定)を考慮すると、上昇傾向と急激な増加が説明できると思います。」
と述べています。
日本のエンジニア市場が「ガラパゴス化」した背景とは?
ガラパゴス化とは、国の技術やサービスなどが、世界標準とは異なる形で国内市場に最適化するように独自の発展・進化を遂げていることを意味します。日本のエンジニア市場が、グローバル標準とかけ離れた形で市場形成されている背景や、原因について考えていきます。
イザディ・エギザバル・アルコルタ氏の言及のように、Indeedの台頭がエンジニアの採用増加に一役買っていることは間違いありません。しかし、それだけが全ての要因ではありません。Indeedの台頭は、求人広告数の増加に大きく貢献しており、これは採用という観点から非常に重要な分野です。しかし、求人広告数が増えた背景には、ソフトウェアの重要性が高まったことが要因としてあります。
ソフトウェアは、AIや機械学習のような最新の技術トレンドに至るまで、様々な分野で活用されています。また、ANAやMetaが展開する「アバター」のような人間と仮想空間を繋げる技術もその一例です。
さらに、ソフトウェアの進歩は消費者の意識を、「モノ」の所有から「サービス」の利用へとシフトさせる要因ともなっています。音楽やコミックの分野で見ても、CDからストリーミングへ、紙の書籍から電子書籍へという変化が起きています。
これらの変化はベンチャー企業や中小企業にも影響を与え、外部委託から自社開発・運用へと移行する動きが見られます。これが求人広告の内容にも反映されていることから、流れとしては、① IT/ソフトウェアの重要性が高まる、② 企業の自社開発・運用の意識が高まる、③ 人材会社を通じて求人数が増える、といったサイクルが形成され、結果として日本のマーケットにおける採用需要が高まっているという状況が考えられます。
今後の課題
上記の内容を踏まえて、日本のエンジニア市場が、現在「ガラパゴス化」という現象に陥っていることを受け、世界の中の日本という観点から、日本の課題点を探っていきます。
日本の技術力を世界へ展開する力が不十分
日本が世界に誇る高度な技術を持っていることは、戦後の高度経済成長期が証明するように、周知の事実です。しかし、問題はその技術を他の国々に広めていく展開力にあります。技術を展開するためには、どう展開していくのか、創造する力が大切ですが、日本は創造力を育てにくい社会であると言えます。
第四次産業革命による人工知能の台頭によって、創造性・ユニークさが重要だと言われている現代で、日本に創造力が不足している原因は、「出る杭を打つ」という日本特有の文化があることです。例えば、日本文化において、同調圧力や集団行動が、美とされていることから、一人一人の自主性に焦点が当たっていないことが挙げられます。これは、創造性の欠如に繋がり、世界への展開力が、失われてしまうことにも繋がってしまうのです。
最後に
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
今回は、エンジニアの市場需要について、世界の盛り上がっているエンジニア市場や、日本のエンジニア市場やその動向の背景、最後に今後の課題についてご紹介しました。
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