会社代表の住所10月から非公開可に-プライバシー保護と起業促進狙う
2023年12月から法務省がパブリックコメントを実施していた「商業登記規則」の改正が、10月1日から施行されることになりました。これにより、株式会社の登記の際に代表者が希望すれば、自宅住所を非公開にできるようになります。
この改正は、プライバシーと公共の利益のバランスをどのように取るかが重要な課題となっています。住所非公開が可能になることで、代表者の安全とプライバシーが向上しますが、同時に悪質な商慣行に対する追跡や対策が難しくなる可能性もあります。法改正が目指すのは、こうした矛盾を最小限に抑え、起業家にとってより安心してビジネスを行える環境を提供することです。
改正の背景 – プライバシー保護と起業促進
会社法では、代表者の氏名や住所を登記事項として公開することが義務付けられています。これは公正で円滑な商取引を目的としていますが、一方でプライバシー保護の観点から代表者の住所公開に懸念の声が上がっていました。
- 会社法では、株式会社の代表者の氏名と住所を登記事項として公開することが義務付けられていた。これは公正で円滑な商取引を目的としていた。
- しかし、代表者のプライバシー保護の観点から、住所公開に懸念の声が上がっていた。経団連などが非公開を求める要望を行ってきた。
- 今回の改正は、プライバシーと公共の利益のバランスを取ることを目指している。代表者の安全とプライバシーを向上させつつ、起業家にとって安心してビジネスができる環境を提供することが狙いである。
住所非公開の手続きと範囲
- 改正後は、株式会社の代表者が希望すれば、登記上の住所を市区町村までの記載に留めることができる。
- 現在は法務局の窓口やインターネット上で、代表者の住所を詳細に閲覧できる状況にある。
- 代表者の住所公開は、脅迫やストーカー行為に悪用されるリスクが指摘されてきた。今回の改正でそうした懸念が解消されることが期待されている。
女性や子育て世代の起業促進に寄与
- 住所非公開措置により、女性や子育て世代の起業が後押しされる可能性がある。
- 小さい子どもを育てる親として住所公開に抵抗感があったとの声も。
- SNSでの自身の露出が多いことから、第三者に自宅を特定されるリスクを危惧していた。
- 「心理的な安全性が保たれ、事業に集中しやすくなる」と法改正を評価している。
被害回復への影響は?
- 日本弁護士連合会などからは、悪質商法の被害回復や債権回収のために代表者住所の公開は必要との意見も出ている。
- 法務省は、本社住所が事実と異なる場合には、登記官が職権で住所非公開を終了できるようにするなど、一定の配慮を設けている。
- 企業に民事訴訟を起こす際、本社住所に訴状を送付できない場合は、代表者の自宅住所が頼りになるため、代表者住所の公開は必要との意見もある。
起業家支援の課題
- 内閣府の調査によると、起業を望ましい職業選択と考える人の割合は2019年時点で24.6%と、中国や米国に比べて低い水準にとどまっている。
- 経営者のプライバシー保護は起業を後押しする一助となる可能性があるが、それ以外にも起業を阻害する要因が存在する。
- 資金調達、ビジネススキルの教育、市場へのアクセスなど、多角的なサポートが必要である。
- 起業家支援の観点からは、住所非公開が、特に女性や子育て世代などの新たな起業家層を生み出す契機となり得る。これは、日本の起業家人口が増加し、多様なビジネスモデルが試されることにつながるかもしれない。
- 改正が施行されるにあたり、実際の効果と社会への影響を慎重に観察し、必要に応じてさらなる政策の微調整が求められるかもしれない。
起業家育成のための環境整備が課題となっています。しかし、起業家の支援には、住所の公開問題以外にも資金調達、ビジネススキルの教育、市場へのアクセスなど、多角的なサポートなど多くの課題があります。そのため、政府、企業、法律家、そして市民社会が連携して、透明性の高い商取引と個人のプライバシー保護を両立させる方策を模索することが重要です。
おわりに
- この法改正により、日本で起業を望む人の割合が増加し、新たなビジネスチャンスが拡がることが期待されている。
- 国際競争力のあるイノベーティブな市場が形成されることも期待されている。
- 経営者のプライバシー保護と起業促進の両立を目指す今回の改正は、女性や子育て世代の起業を後押しすることが期待されるが、被害回復の面での影響にも注視が必要である。
これからの経済活動において、この改正がどのように機能するかが、注目されるポイントとなるでしょう。起業を望む人の割合が諸外国に比べて低い日本で、イノベーションを生み出す新陳代謝につながることを願いたいものです。